「…セル、エセル!聞いてる?」
「ん、あぁ御免ね柚子ちゃん。」
「まぁ、凄いもんな、この台風。」
「で、何の御用だったんですか?」
「ドレスが出来上がったから見てほしいんだけど、今いい?」
「勿論。」
今年最大の台風がここ、イギリスにもやってきた。そとはどんより、ざーざー、ぴゅーぴゅー。凄いことになっている。
そんな中、ロレンス家お抱えのデザイナーが柚子が先週注文したドレスを持ってきた。
薄い水色の、シンデレラモチーフのドレス。結婚式でお色直しの時に着るものだ。
「そうですね、もうちょっと袖を膨らませてくれますか?」
「Yes,sir.では、また来週、お直して持って参ります。」
「すみません、おねがいします。」
「では私はこれで…」
ばたん。
「「はぁぁぁ〜」」
二人はため息をついた。
衣裳部屋であーでもない、こーでもないとデザイナーまで巻き込んでドレスの袖について討論してたのだ。
『だーかーらー!袖はこのくらいで良いの!あんまり膨らんでるとおかしく見えるって!』
『いーや!赤毛のアンスタイルがあんなに似合うんだからもっと袖が膨らんでるほうが似合うに決まってる!』
『あれは私が好きでしてたんじゃない!とゆーよりなんで知ってるんだ?!』
『そんなことはどーれもいいでしょー!とにかく膨らんだ袖がいいんです!』
『わがままを言うなーっ!』
バカップルの喧嘩にしか見えない討論を繰り広げていた時、デザイナーが口を開いた。
『あ、あの〜。奥さまは小柄な方ですから袖はあんまり膨らんでいないほうが可愛いと思いますよ。気になるんでしたら
もう少しだけ袖を膨らましてみてはいかがでしょうか?』
そうやって試しに袖を少し膨らませてみたところその方が柚子には似合っていたので仕立て直してもらう事にしたのだ。

「この色さー、何の色だかわかる?」
しばらくの沈黙の後、リビングに戻ってからやっと柚子は呟くように言った。
「シンデレラ、じゃないんですか?そういってましたよね?『一番好きな童話だからお色直しの時にでもあのドレス着てみたい』って。」
「ううん、あれ…」
柚子が指差したのは写真たて。高3の冬、ここですごした時に今は亡きくまのルドルフと撮った写真だった。
「ルドルフがさ、『わたし、水色大好きなんですよ。いつかリボンも水色にしたいんです。』って。だから私、『じゃぁ、今度つけてあげるね』
って、約束したんだ。果たせなかったけど。その時に『柚子さん、水色似合いそうですよね』っていってたからさ。水色のドレスつくろうって思ったんだ。
んで、ルドルフの代わりにリボン一杯付けようって。」
「そうだったんですか…ルドルフも喜んでいると思いますよ。」
「ん…。」

「ルドルフの話が出たついで…と言っちゃ何ですが、昔今日みたいな日にハルと城壁のところまで行った事があるんです。」
「さっき、ずっと外見てたのはそれ思い出してたの?」
「えぇ。小学生の頃、秋休みでハルが泊まりに来たんです。で、台風があまりに凄いから城壁崩れてないかなーってw」
「笑って言う事じゃないだろう。よくうちに戻れたな。」
「城壁の様子を見に行っていた家の者に見つかりまして、すぐ連れ戻されました。ベネットが凄い顔でおこってました。」
「そりゃそうだ。でも、先生の事だから後にも先にもそんなイタズラはなかったんでしょ?」
「ええ。よくわかりますね…ベネットに怒られたのはあの時だけです。」
「なんかさ、こんなこと言ってもしょうがないんだけど…おハルさんとルドルフ君にも結婚式きてほしかったな…」
「そういうだろうと思って用意しときました」
そう言ってロレンスが取り出したのは彼の親友の名を冠したCDだった。
「なにこれ?」
「コネをつかって出してもらったんですよ。ハルのCD。これなら、ハルも結婚式に参加できる。あのドレスがルドルフの代わりもしてくれるでしょう
。」
照れくさそうに、ロレンスは笑った。
ちょっと肩を震わせ、なきわらいの表情で柚子は「ありがとう」と言い、ロレンスにキスをした…。
「かわいいなぁ、柚子ちゃんは。そんなに可愛いと襲っちゃいますよ?」
「え゛…」
そのまま柚子を抱っこして寝室にロレンスは行っちゃったとかいうのは唯、風のみが知るところ…。




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